この選挙では、阿部信行(あべのぶゆき)元首相を会長とする翼賛(よくさん)政治体制協議会が推薦(すいせん)する候補者が、定員の466人中381議席(全体の8割強)を得て絶対多数となり、協議会に所属する議員は選挙後に翼賛政治会を結成し、政府による政策に協力しました。こういった経緯から、この選挙は「翼賛選挙」とも呼ばれています。
ところで、この翼賛選挙によって、帝国議会は政府の提案の承認を与えるだけの機関と化してしまったとみなす見解が多いようですが、実際には大日本帝国憲法(=明治憲法)や議会活動は停止したことはありませんでしたし、いわゆる翼賛政治家以外の代議士も85人誕生しているという事実も存在しています。
なお、この選挙で翼賛政治体制協議会の推薦を受けた候補者には、臨時軍事費として計上された機密資金を利用した選挙資金が配られていました。民間からの資金提供を受けていないという点ではクリーンと言える一方で、選挙民や財閥(ざいばつ)などの顔色を一切うかがう必要がないかわりに、資金提供を受けた軍部の意向に逆らいにくいという流れもありました。
かつて国家社会主義思想が我が国で広がりを見せた際に、軍部を中心に「政党政治は腐敗(ふはい)している」と国民に対して喧伝(けんでん、さかんに言いふらすこと)されましたが、表向きは「クリーン」な翼賛選挙も、その裏では「軍部と癒着(ゆちゃく)」していたのみならず、民間の意見が取り入れられない環境にあったのです。
※黒田裕樹の「百万人の歴史講座」をご紹介します。詳しくは下記のバナーをご覧ください。
※「黒田裕樹の歴史講座+日本史道場+東京歴史塾」のご案内です。他の教師とは全く異なる、歴史全体の大きな流れを重視した「分かりやすくて楽しい歴史」をモットーに多くの方にお教えいたします。詳しくは下記のバナーをご覧ください。
※無料メルマガ「黒田裕樹の歴史講座・メルマガ編」の登録はこちらからどうぞ。多くの皆様のご購読をよろしくお願いいたします。


いつも応援いただきまして、本当に有難うございます。