しかし、現地の部隊は盗聴を防ぐため、玉砕の直前に無線機を壊しており、もはや無線は通じないですし、何よりも電報を受け取る相手が誰もいません。にもかかわらず、陛下は「それでも構わないから、電報を出してほしい」と重ねて仰いました。なぜ昭和天皇は、もはや通じない相手への電報にこだわられたのでしょうか。
縁起の良くない話で申し訳ないですが、私を含めて人間は必ずいつかは死にます。長年一緒に暮らした肉親を亡くすことは悲しくつらいですし、ましてや、子に先立たれた親の悲しみは、計り知れないものがあるでしょう。
そして、目の前に息を引き取ったばかりの遺体が横たわっていれば、子は親の、親は子の名を何度も叫びながら泣き崩れます。何度呼びかけようが、二度と返事をすることがないことなど分かりきっていますが、それでも呼びかけずにはいられません。
昭和天皇のご真意もそこにありました。我が国のために命をかけて戦い、そして散っていった兵士の一人ひとりが、陛下にとってはかけがえのない生命なのです。だからこそ、親が亡くなった子に対してそうするように、昭和天皇は二度と聞くことのかなわない、ねぎらいのお言葉を兵士たちにかけられたのでした。
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