ところで、大逆事件の真相に関しては、幸徳がどこまで天皇暗殺にかかわっていたのかなど不明な点も多く、政府による捏造(ねつぞう)ではないかという見方もあるようです。
ただ、当時の政府(第二次桂内閣)からしてみれば、前任者(第一次西園寺内閣)が社会主義に寛容だったことで事態を深刻化させてしまったことへの反省や、かねてより無政府主義や直接行動を主張してきた幸徳の言動に対する強い警戒感があったところへ「天皇暗殺」という情報が飛び込んで、一気に疑心暗鬼(ぎしんあんき)になってしまったという背景も存在します。
大逆事件を「捏造」と決めつけて、現代の価値観のみで当時の政府を激しく非難するのは容易(たやす)いことですが、その背景にある「大きな歴史の流れ」も同時に理解しないと、当時の最も重要な視点を見逃してしまうことにはならないでしょうか。
なお、大逆事件以後、第一次世界大戦を迎えるまで、社会主義は「冬の時代」を過ごすことになったほか、事件をきっかけとして、警視庁内に特別高等警察(=特高)が置かれるようになりました。
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