信長によって、巨大な権益を持っていた宗教勢力は解体されましたが、天台宗や浄土真宗などの宗教そのものは現在も残っています。実は、これこそが本当の意味での「政教分離」(せいきょうぶんり)であって、江戸時代以降、現在に至るまでの私たち日本人に対して、宗教が政治に関わることによって生じる様々な問題とは無縁にしてくれているのです。なお、この問題については3月の大阪での講座(第12回)で改めて取り上げます。
いずれにせよ、当時の国民の切実な願いでもあった、巨大な圧力団体と化した宗教勢力の排除(はいじょ)に成功した信長が、多くの国民から歓迎されたからこそ、信長が志半(こころざしなか)ばで滅ぼされた後も、その後を継いだ秀吉や、あるいは家康によって戦国の世は終わりを告げ、江戸時代を迎えることになったのでした。
天下を統一して、戦国時代を終わらせるという大きな目標は、豊富な経済力で兵農分離を実現するなどといった、それまでの常識にこだわらない柔軟(じゅうなん)な姿勢のみならず、天下取りへ向けての明確なビジョンを持つとともに、どんな圧力にも屈(くっ)しないという強い信念に基づく実行力によって、初めて可能となったのです。
そして、それらの要素をすべて持っていた信長だったからこそ、時代は彼を「英雄」として選び、その一方で、信長との決定的な「3つの違い」を克服できなかった信玄やその子孫たちは、歴史の表舞台から姿を消していったのでした。
※第10回歴史講座の記事はこれで終了です。なお、明日(3月7日)からは第11回歴史講座の内容の更新を開始します。




いつも有難うございます。
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伝次郎 信長への固定観念が1つ消えました。
信長の極悪非道な一面としての、比叡山延暦寺焼き討ちと刷り込まれていましたが、今回の講座で消えました。
信玄、信長にこのような違いがあることは知りませんでしたので大変勉強になりました。
遅くなりましたが、いつもコメントへの返信ありがとうございます。
次回からもブログ楽しみにしています。
伝次郎さんへ
黒田裕樹 > 信長への固定観念が1つ消えました。
> 信長の極悪非道な一面としての、比叡山延暦寺焼き討ちと刷り込まれていましたが、今回の講座で消えました。
> 信玄、信長にこのような違いがあることは知りませんでしたので大変勉強になりました。
お言葉有難うございます。
「刷り込み」の歴史教育が横行する現実を嘆く者ですが、今回のようなかたちで、少しでも皆様のご理解につながればと思っております。
> 遅くなりましたが、いつもコメントへの返信ありがとうございます。
> 次回からもブログ楽しみにしています。
いえいえ、ご質問にお答えするのが、私のような歴史ブログの運営者としては当然の務めです。
次回の秀吉の朝鮮出兵でも、同じような「刷り込み」からの脱却を目指したいと考えております。
こんばんは。
スカイラインV35 織田信長は噂どおり無神論者で合理主義者だったんでしょうね。逆にそれ故に「宗教そのものは弾圧しない」という結論を導き出した。と、言った所でしょうか。
やはり、信長は政治、軍事、経済、宗教(に対する認識)と、他を圧倒していたんでしょうね。
そして武田信玄は、実はその当時の圧倒的大多数の平均的な日本人だったのかもしれない。という認識も持ちました。
この辺も何回やっても興味が尽きない所ですね。
訂正
スカイラインV35 ちょっとブログを読み直して考え直しました。
武田信玄は、当時の為政者(公家や武家や僧侶も含め)の平均的な日本人だったのかもしれない。と訂正しようと思います。
失礼しました。
スカイラインV35さんへ
黒田裕樹 > 織田信長は噂どおり無神論者で合理主義者だったんでしょうね。逆にそれ故に「宗教そのものは弾圧しない」という結論を導き出した。と、言った所でしょうか。
> やはり、信長は政治、軍事、経済、宗教(に対する認識)と、他を圧倒していたんでしょうね。
そうですね。信長のような合理主義者でない限りは、それまでの「常識」でもあった政治と宗教の結びつきをあっさりクリアすることはできなかったでしょう。また、その合理性ゆえに政教分離など、斬新な政策を次々と打ち出すことができたのではないでしょうか。
秀吉や家康の場合は、信長という先駆者が敷いたレールのうえを走ったということになるもかもしれません。もっとも、走る行為そのものも勇気のいる話ですが。
> そして武田信玄は、実はその当時の為政者(公家や武家や僧侶も含め)の平均的な日本人だったのかもしれない。という認識も持ちました。
> この辺も何回やっても興味が尽きない所ですね。
同感です。日本人らしさであるがゆえに、戦国時代の混乱を脱出できなかったともいえるでしょう。この国では、様々な「日本人離れ」した存在でないと、本当の改革はできないのかもしれませんね。
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Masa 記念すべき10回目の講座おめでとうございます。
毎回毎回、知らなかった歴史が先生の講座で明かされてゆくのでとても楽しんでいます。
信長、信玄ともにすごいとは思っていましたが、ここまで大きな違いがあるということに驚きました。
ぼくの好きな信長は、やっぱりすごい方だということが、この講座を通じてより深まりました。
ありがとうございました。
今晩は
りら 信長が最初の政教分離を
行なったのですね
目から うろこの気分です
いつも感心するばかり
ろくにコメント出来なくて
ごめんなさいね
Masaさんへ
黒田裕樹 > 記念すべき10回目の講座おめでとうございます。
有難うございます。ブログ開設から1年足らずでここまで来ることができて光栄です。
> 毎回毎回、知らなかった歴史が先生の講座で明かされてゆくのでとても楽しんでいます。
> 信長、信玄ともにすごいとは思っていましたが、ここまで大きな違いがあるということに驚きました。
> ぼくの好きな信長は、やっぱりすごい方だということが、この講座を通じてより深まりました。
時代に名を残す英雄というものは、当時や将来の人類に対して大きな功績を残している場合が多いです。信長も無論その一人というわけですね。もちろん、信玄も地元の甲府を中心に大きな業績を残していますよ。
> ありがとうございました。
こちらこそ。明日(7日)からの更新もお楽しみに!
りらさんへ
黒田裕樹 仰るとおり、信長こそが我が国で本当の意味での政教分離を果たした人物といえるでしょう。
このあたりの経緯については、今月の講座で詳しく紹介する予定です。
いえいえ、私もりらさんの世界一周に癒やされている一人ですから、お気になさらないで下さいね(^o^)丿
まさに次世代と旧世代
オバrev 信長と信玄は、まさに次世代と旧世代の戦いのように感じました。
江戸幕末から明治維新もそうでしたが、時代の流れの中で、その流れにマッチした価値観を持った者がその戦いに勝利し、次の時代を担うように思います。
歴史は繰り返します。結局人間の考えは進歩してないのかもしれません。
それを考えると、現在の激動する時代には、自民党旧田中派のようにお金や利権にまみれた政治家には退場願いたいところです・・・誰とは言いませんが(^^;)