昭和6(1931)年12月に成立した犬養毅(いぬかいつよし)内閣の大蔵大臣(おおくらだいじん)となった元首相の高橋是清(たかはしこれきよ)は、不況の一因となった金輸出を直(ただ)ちに再禁止し、さらに銀行券の金への兌換(だかん、銀行券を正貨=一国の貨幣制度の基準となる貨幣と引き換えること)を停止しました。これによって我が国は金本位制から離(はな)れ、管理通貨制度(かんりつうかせいど)へと移行することになりました。
さて、我が国が金本位制から脱(だっ)したということは、それまでの財政の足かせとなっていた「国内における金の保有量に左右される」こともなく、フリーハンドな財政政策が可能となることを意味していました。また、我が国が金輸出再禁止に踏(ふ)み切ったことで、国際的な円の相場が下落(げらく)する傾向(けいこう)にありました。
高橋是清蔵相(ぞうしょう)はこれらの流れを生かし、我が国の為替相場(かわせそうば)を計画的に低くしたほか、円安を利用して輸出を増加させました。また赤字公債(あかじこうさい)を発行して軍事費・農村救済費などの公共事業や公共投資を積極的(せっきょくてき)に行い、我が国の内需(ないじゅ)を拡大させる政策をとりました。
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ぴーち こんばんは!
何やら良くは分かりませんが、
内需拡大させていく事が今の日本にも
必要であるのだと思いますが、
またこの当時とは状況が違うので
難しい舵取りを政府は担っているのでしょうね。
応援凸
ぴーちさんへ
黒田裕樹 仰るとおり、内需拡大は景気回復への一里塚ですが、その実現はなかなか難しいものがあります。
とはいえ、今回のような成功例に学ぶことは大きいと思いますね。
ブロック経済を形成していたイギリスなどの列強は、こうした我が国の政策をソーシャル=ダンピング(国ぐるみの投げ売りのこと)と非難(ひなん)し、関税(かんぜい)を大幅(おおはば)に引き上げる対抗措置(たいこうそち)を行いました。また、綿布の製造などに必要となったこともあって、アメリカからの綿花(めんか)や石油などの輸入が増大し、我が国のアメリカに対する依存度(いぞんど)が高くなっていきました。
円安による輸出の急増は結果として様々な産業の活性化をもたらし、昭和8(1933)年には経済成長率が二ケタを記録するなど、我が国は世界恐慌(せかいきょうこう)以前の生活水準に回復するとともに、日本経済は昭和恐慌(しょうわきょうこう)からの脱出(だっしゅつ)に成功しましたが、これは世界の資本主義国家の中でもっとも早かったのです。
ちなみに、現在(平成25年)の第二次安倍晋三(あべしんぞう)内閣がいわゆる「アベノミクス」と呼ばれる積極的(せっきょくてき)な経済政策を行っていますが、これは今回紹介(しょうかい)した「高橋蔵相による積極財政」がモデルになっているともいわれています。
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オバrev う~む、安倍・黒田コンビのやろうとしていることはまさに仰るとおりですね。
G20で日本の金融緩和と円安政策が批判を浴びずに認められたのは、黒田総裁の各国中央銀行への人脈による所が大きかったらしいですけど、これで大手を振ってこのまま政策を推し進めていくでしょうね。
ただどこまでやるかの見極め、そして為替やインフレのコントロールが難しいと思うのですが、高橋是清はどう対応していくんでしょうか?
ぴーち こんにちは!
日本は物事が決まるまでは、困難を極めますが
いざ方針が定まり、それに向かって突き進んでいくときの勢いは素早いですよね^^
他国の追従を許さないというか^^
応援凸
オバrevさんへ
黒田裕樹 仰るとおり、デフレが進行している現状では高橋財政のような積極財政が不可欠です。
ただし、そのような政策を行い続けた結果がどうなるのか、そのあたりも含めて講座の中で紹介していきたいと思っております。
ぴーちさんへ
黒田裕樹 確かに我が国にはそのような一面がありますね。
結果が吉とでればそれはそれで良いのですが…。
また、昭和10(1935)年には重化学工業の生産額が軽工業の生産額を上回り、昭和13(1938)年には金属・機械・化学工業の合計生産額が工業生産額の過半数を占(し)めるようになるなど、産業構造の全体が軽工業中心から重工業中心へとシフトし始めました。
鉄鋼業では、八幡製鉄所(やはたせいてつじょ)を中心とする大合同によって昭和9(1934)年に日本製鉄(にほんせいてつ)株式会社が創立され、鉄鋼生産を独占(どくせん)するとともに鋼材(こうざい)の自給(じきゅう)が達成されました。また自動車・航空機・化学などの部門で日本産業(にほんさんぎょう、日産=にっさん)や日本窒素(にほんちっそ、日窒=にっちつ)などの新興財閥(しんこうざいばつ)が台頭(たいとう)し、満州や朝鮮へも進出しました。
一方、既存(きぞん)の財閥も満州事変後から次第に重化学工業の部門に進出したことで、産業界は活気(かっき)づいて不況(ふきょう)から立ち直っていきました。
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ぴーち こんばんは^^
この頃の日本の産業には「軽」から「重」に移行出来る伸び代が存在していましたが、
今の日本の産業はどの分野でも頭打ち気味ですよね・・(^^ゞ
日本が得意とする分野でどうにか生き抜いていきたいものです。
応援凸
オバrev 金融緩和、財政政策に加えて成長戦略もちゃんとしていたんですね。
となると、アベノミクスも成長戦略がうまくいけば大筋ではこの道を行くんでしょうね。
しかしその後がどうなるか怖いですけど(・_・;)
ぴーちさんへ
黒田裕樹 仰るとおり頭打ちの感があることは否めませんが、トルコで我が国の原発輸出が決まるなど、まだまだ伸びしろはあると思います。
数十年前のインフラの補修や再整備も待ったなしですし、公共事業による景気回復の期待は高まるばかりですね。
オバrevさんへ
黒田裕樹 > 金融緩和、財政政策に加えて成長戦略もちゃんとしていたんですね。
> となると、アベノミクスも成長戦略がうまくいけば大筋ではこの道を行くんでしょうね。
仰るとおりです。高橋蔵相の積極財政がアベノミクスの基本と思われている大きな所以でもありますね。
> しかしその後がどうなるか怖いですけど(・_・;)
景気が煮詰まれば、緩やかに逆方向へと切り替える必要がありますからね。
それをスムーズにできればよかったのですが、実際には…。
同じような流れが。。
青田です。 青田です。
アベノミックスですが、
円安による輸出の促進ですが、
この高橋是清の時のように結局は、中国依存です。
中国への生産拠点、中国市場、
さらに、現在の日本社会は、国内の消費は
外国人観光客頼みです。
さらに、日本の国内の労働市場も外国人労働者(現在100万人)です。
もっとも、誤解のないように言いますが、これは、安倍政権だけの責任ではありません。
現在のような少子化、高齢化は、20年前から、わかっていたのに、政治家、官僚、国民も全く、考えず、何の手も打たなかったことが原因です。
現在も、政治家(与党、野党)、評論家、官僚、国民も
これからの確実な未来の事実を観ようとしていません。
本当は、目をつぶっていても、何も変わらず、目を開けた時には、状況は、前より悪くなっています。
戦略とは、物事を長期的、全体的、根本から考える力です。
安倍氏は、全体的(地球)で、モノを考える力はありますが、長期的(時間軸)で、モノを考える力が欠如していると思います。
青田さんへ
黒田裕樹 なるほど、その危険性はありますね。
その後、昭和9(1934)年7月の岡田啓介(おかだけいすけ)内閣の誕生によって一旦(いったん)蔵相を退(しりぞ)きますが、後任者の病気もあって、同年11月には高橋がかつて総裁を務めていた立憲政友会(りっけんせいゆうかい)が岡田内閣に対して野党宣言をしていたのも関わらず、またしても大蔵大臣に復帰しました。
高橋が再び蔵相となった頃(ころ)には、本人が推進していた積極財政も所期(しょき、期待している事柄のこと)の目的をほぼ達成しており、このまま続けては逆に高率のインフレーションになる恐(おそ)れが出てきていました。
このため、高橋は予算の引き締(し)めに政策を切り替(か)え、軍事費を中心に国の財政を一律カットしようとしたことが軍部の恨(うら)みを買い、あの「大事件」を引き起こす流れにつながってしまうのです。
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ぴーち こんばんは!
軍部の恨みを買ったという事は、
当時は軍部は絶対的な存在であって、しかもその軍部に対していかなる理由であれ楯突く形となった事そのものが要因だったのでしょうか。それとも、軍部には誰の権限であっても逆らうことが許されない風潮の中、
特に軍部をターゲットに絞った政策が断行されようとした事が、いけなかったのでしょうか・・?
応援凸
ぴーちさんへ
黒田裕樹 平時ですら予算を削られるのは不愉快なことですし、ましてや当時は統帥権干犯問題もあって軍部が政治に口出しするのが当然という空気がありました。
そんな中でも高橋蔵相は我が国の国益を守るために懸命だったのですが、軍事力を持つ相手を敵に回すと…。
オバrev 成る程、やはり今の1000兆円にも上る政府債務を返すためには緊縮財政にもっていくしかない訳ですね。
高橋是清の場合は軍部の反発を食らいましたけど、現代は財政削減のために公務員改革、特に官僚制度の改革に踏み込まないと進みませんから、当然官僚の強い反発があるでしょうね。
何か当時の軍部が現代では官僚に代わって歴史が繰り返しているように感じます。でも当時の二の舞だけは避けてほしいです。
オバrevさんへ
黒田裕樹 政府債務の1000兆円の大部分は国内で循環していますので、むしろ問題はインフレターゲットを遥かに超えてしまった景気の加熱時を見極められるかどうかだと思います。
今はむしろ積極的に経済政策を進めるべきであり、その段階での官僚の反発が怖いですね。