なぜなら、ロシア軍を指揮していたクロパトキンが、迫りくる日本軍が旅順の永久要塞を落とした乃木率いる第三軍であることに気付いて恐怖に怯(おび)えたからです。乃木の存在を恐(おそ)れるあまり、第三軍が日本軍の主力であると判断したクロパトキンは、約38,000人しかいなかった第三軍の兵力を100,000人の大軍団と読み間違え、兵力の多くを乃木へと集中させました。
クロパトキンの思い違いによって約3倍の大兵力との戦いを強(し)いられた第三軍は多数の死傷者を出しながらも持ちこたえた一方で、優勢を誇っていた東部および中央戦線から、第三軍への割り当てのためとはいえロシア軍が退却したことが日本軍の追撃(ついげき)への呼び水となり、奉天会戦の大勢を決する大きな転機へとつながったのです。
要するに「乃木の幻影(げんえい)」に恐れをなしたロシア軍が第三軍を集中攻撃したことが、奉天会戦を我が国の勝利へと導いたことになります。また、この後に東郷平八郎(とうごうへいはちろう)率いる日本海軍の連合艦隊(れんごうかんたい)が日本海海戦(にほんかいかいせん)においてロシアのバルチック艦隊に完勝しますが、これも海軍の要請どおりに第三軍が旅順の太平洋艦隊を全滅させたことで、後顧(こうこ)の憂いなく連合艦隊が決戦に臨むことができたという流れがありました。
奉天会戦や日本海海戦という陸海の一大決戦を陰で支えた乃木率いる第三軍が、日露戦争勝利の立役者であったという事実こそが、乃木が比類(ひるい)なき名将であったことを証明しているのではないでしょうか。





いつも応援いただきまして、本当に有難うございます。
トラックバック(0) |
ぴーち おはようございます!
どういうことわざか、忘れてしまいましたが、
本人がその場に居合わせなくても、ちゃんと相手の心にその人物の姿が常に刻まれる様になれば、
それは本物の存在感なのだと思いますね。
乃木将軍は手ごわい。
そういう印象が相手にインプットされた事は
戦争という現状であれば尚更、好都合でしたね。
凸
ぴーちさんへ
黒田裕樹 仰るとおりですね。
乃木将軍に植えつけられた存在感や恐怖感にロシア軍が自滅した格好となりましたから、乃木将軍がいなければ奉天会戦も勝利できたどうか分からないところがあると思います。
その後、明治天皇に拝謁(はいえつ)した乃木は万感(ばんかん)の思いを込めて復命書(ふくめいしょ)を読み上げると、自(みずか)らの決意を陛下の御前(おんまえ)で述べました。
「臣(しん)希典不肖(ふしょう)にして、陛下の忠良(ちゅうりょう)なる将校士卒(しょうこうしそつ)を多く旅順に失い申す。このうえはただ割腹して罪を陛下に謝し奉(たてまつ)らん」。
明治天皇は無言でお聞きになっておられましたが、乃木が退出(たいしゅつ)しようとすると呼び止められ、以下のように仰られました。
「卿(きょう、ここでは乃木のこと)が割腹して朕(ちん)に謝せんとの衷情(ちゅうじょう、うそいつわりのない心)は、朕よくこれを知る。然(しか)れども今は卿の死すべきときにあらず。卿もし強いて死せんとならば、朕世を去りたる後にせよ」。





いつも応援いただきまして、本当に有難うございます。
トラックバック(0) |
ぴーち おはようございます!
なるほど~
私は、乃木将軍が自害した理由は、明治天皇が崩御された事に対しての後追い自殺だと思っていたのですが、本当の理由は、日露戦争時の責任を感じての思いであって、この時点では陛下も将軍の本意をご存知でいらっしゃったわけですね。
ぴーちさんへ
黒田裕樹 > 私は、乃木将軍が自害した理由は、明治天皇が崩御された事に対しての後追い自殺だと思っていたのですが、本当の理由は、日露戦争時の責任を感じての思いであって、この時点では陛下も将軍の本意をご存知でいらっしゃったわけですね。
仰るとおりです。
乃木将軍が後追い自殺、すなわち殉死を決断したのは責任感の強い彼なりの理由があったということです。
陛下のお優しいご沙汰(さた)を乃木は涙ながらに拝受(はいじゅ)しましたが、自分が犯(おか)した「大罪」を彼は終世(しゅうせい)忘れることはありませんでした。後に私用で長野を訪問した際に師範学校(しはんがっこう)に呼ばれた乃木は、校長のたっての願いで講演を求められたことがありました。
しかし、登壇(とうだん)をうながされても演壇(えんだん)には上がらなかった乃木は、その場に立ったままでこう言いました。
「諸君(しょくん)、私は諸君の兄弟を多く殺した乃木であります」。
この一言を口にした乃木はそのまま絶句(ぜっく)し、両目からは止めどもなく涙があふれ出ました。そして、そんな乃木の様子を見た生徒や教師らも共に涙を流したと伝えられています。





いつも応援いただきまして、本当に有難うございます。
トラックバック(0) |
ぴーち おはようございます!
乃木将軍のお気持ちはよく分かりますが、
戦争は人と人とが殺し合いをする場所であり、
それが与えられた仕事です。
それは・・誰もが無傷で戻れれば、それに越したことはありませんが、そういう訳にはいかない事でしょう・・。
自分ひとりがその責任の重さを感じるのなら、
その戦争を最初に起こしたものへの責任は?認めたものへの責任は?そちらの責任の方がはるかに
重大だと思います。
乃木将軍の悲しみは将軍の心の日本人たるDNAが感じる涙であると同時に、自分自身で大きく膨らませ過ぎた
責任の重圧に気持ちが押し潰されそうになってそれ以上耐えられない思いもあったのではないでしょうか?
ぴーちさんへ
黒田裕樹 なるほど、そういう見方もありますね。
現場で将兵とともに戦う指揮官は、同時に前線での人間の死を一番見つめる場所でもあります。
それだけに人一倍責任を感じていたといえるのかもしれません。