さらに、ポツダム宣言の条件の中には「新憲法の制定」は含(ふく)まれていませんでした。軍事に関する条文などへの部分的な改正は必要であったとしても、現行の日本国憲法のように全面的な改正を、ましてや明治憲法の完全否定までは考えていなかったと、ポツダム宣言の起草者(きそうしゃ)であった駐日大使(ちゅうにちたいし)の経験者のグルーらが後に述懐(じゅっかい、過去の出来事や思い出などを述べること)しています。
そして、終戦の直後に成立した東久邇宮稔彦王(ひがしくにのみやなるひこおう)内閣や、そのあとを受け継(つ)いだ幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)内閣は、軍国主義の政治体制を改め、選挙法などの個別法(こべつほう)さえ改正すれば連合国側が求める我が国の民主化は達成できると判断し、基本法(きほんほう)である明治憲法の改正は必要ない、とまで考えていました。
しかし、我が国を占領(せんりょう)したGHQ(=連合国軍最高司令官総司令部、れんごうこくぐんさいこうしれいかんそうしれいぶ)は、その政策の大きな柱として、ポツダム宣言に違反(いはん)し、さらに国際法であるハーグ陸戦条約(ハーグりくせんじょうやく)にも違反する「新憲法の制定」を当初から決定していました。しかも、宣言違反をごまかすために、あたかも「日本が自主的に憲法を改正、または起草を行う」ように仕向けることが、当時の基本方針として明示されていたのです。




いつも有難うございます。
トラックバック(0) |
ぴーち こんばんは!
最後の7行を読ませていただき、唖然としてしまいました。
最初から新憲法の制定が決定していて、しかも、それを自主的に日本が提案していたなどと、濡れ衣を着せていたとは!
いくら敗戦した国だからとは言え、酷い話ですね。侵略されたり、国を二分されたりという
もっとも酷い仕打ちは免れたものの、
やはり負けた国としての屈辱を日本も少なからずしっかりと受けていたんですね。
応援凸
ぴーちさんへ
黒田裕樹 > 最後の7行を読ませていただき、唖然としてしまいました。
> 最初から新憲法の制定が決定していて、しかも、それを自主的に日本が提案していたなどと、濡れ衣を着せていたとは!
> いくら敗戦した国だからとは言え、酷い話ですね。侵略されたり、国を二分されたりという
> もっとも酷い仕打ちは免れたものの、
> やはり負けた国としての屈辱を日本も少なからずしっかりと受けていたんですね。
これこそが日本国憲法の隠された歴史です。
領土分割という目に見える屈辱も辛いものですが、今回のように目に見えずに、しかも自らの意思で行ったと思わせるような狡猾(こうかつ)な屈辱も、たまったものではないですね。
次回(26日)から、我が国がGHQによって味わった屈辱を検証することになります。
黒田裕樹さん
風早 りら ポツダム宣言の条件の中には当初は
「新憲法の制定」は含まれていなかったのですね
巧妙に仕組まれた わなというわけですか
納得がいきませんよね
風早りらさんへ
黒田裕樹 > ポツダム宣言の条件の中には当初は
> 「新憲法の制定」は含まれていなかったのですね
> 巧妙に仕組まれた わなというわけですか
> 納得がいきませんよね
そのとおりです。
占領しているという事実を悪用した巧妙な罠です。
我が国がいかにして新憲法の制定を余儀なくされたのか。その流れを探っていきたいと思います。
翌昭和21年に改正憲法の草案が完成し、2月8日に政府がGHQに提出しました。この草案は、憲法問題調査委員会の中心人物であった国務大臣(こくむだいじん)の松本烝治(まつもとじょうじ)の名前から「松本試案」と呼ばれています。
松本試案の内容は、前年の昭和20年の帝国議会(ていこくぎかい、現在の国会)で松本大臣が発表した、いわゆる「松本四原則」に基(もと)づいていました。その内容は以下のとおりです。
1.天皇の制度の基本原則を変更しない
2.議会の権限の拡大
3.国務大臣の議会に対する責任の明確化
4.自由及び権利の保護の拡大と侵害に対する国家の保障の強化
政府としては明治憲法の基本方針を大きく変更する必要はなく、部分的な改正だけでGHQが求める民主化に十分対応ができると判断していたのです。しかし、GHQは松本試案の内容は保守的であると見なして2月13日に拒否を通告し、さらにGHQが独自に作成した 「マッカーサー草案」を政府に提示しました。
その内容に対して、松本大臣をはじめとする当時の政府首脳が唖然(あぜん、思いがけない出来事にあきれて声も出ないさまのこと)とするのみならず、その際のGHQの高飛車(たかびしゃ)な対応に慄然(りつぜん、恐ろしさにぞっとするさまのこと)としました。




いつも有難うございます。
トラックバック(0) |
ぴーち こんばんは!
GHQの高飛車な対応が気になるところですが、
マッカーサー元帥自体は、乃木将軍を
尊敬していたというお話を聞いたことがあり、
日本に対する感情はさほど悪くは無かったのではないかと思っておりましたが。。
なんだか雲行きが怪しいお話になって来ましたね^^;
応援凸
ぴーちさんへ
黒田裕樹 > GHQの高飛車な対応が気になるところですが、
> マッカーサー元帥自体は、乃木将軍を
> 尊敬していたというお話を聞いたことがあり、
> 日本に対する感情はさほど悪くは無かったのではないかと思っておりましたが。。
> なんだか雲行きが怪しいお話になって来ましたね^^;
マッカーサー自身は確かに親日だったかもしれません。
彼の決断がなければ昭和天皇の運命も変わっていたでしょうし。
しかしながら、彼はアメリカの人間です。
アメリカの国益を第一に考えて動く人物ですから、当然我が国にとって非常な手段をとることもあるでしょう。
そして、その最たるものが次回(27日)からの「新憲法の制定」です。
黒田裕樹さん
風早 りら 今日のお話は 難しいお話で
全てを理解することが出来ませんでした
明日の講座で しっかり勉強したいと
思います
風早りらさんへ
黒田裕樹 > 今日のお話は 難しいお話で
> 全てを理解することが出来ませんでした
> 明日の講座で しっかり勉強したいと
> 思います
そうでしたか。
我が国では憲法改正の必要はないと思っていたところに、GHQから改正を強要され、仕方なく作成してみたところ、やっぱりあまり変わらなかった(=それだけ明治憲法が民主的だった)。しかし、どうしても新憲法を制定させたかったGHQは、我が国を黙らせるためにあらゆる手段を用いようとした…というところでしょうか。
いずれにせよ、次回(27日)から衝撃の事実が明らかになります。
松本大臣がなぜ一院制なのかをGHQに問いただすと、ホイットニー民政局長は「日本にはアメリカのように州(しゅう)という制度がないから上院(じょういん)は必要ないし、一院制の方がシンプルではないか」と答えました。要するに、憲法草案を作成した立場の人間が、二院制の意義を全く知らないのです。
さらに松本大臣を驚(おどろ)かせたのが「土地その他の天然資源は国有とする」という事項でした。これは私有財産の否定を意味しており、松本大臣が後に幣原首相に草案を報告した際に「まるで共産主義者の作文だ」という会話が残されています。
なぜマッカーサー草案には二院制に対する認識が欠けていたり、あるいは私有財産を否定するような内容が含まれていたりしたのでしょうか。それもそのはず、実はマッカーサー草案は「憲法の素人(しろうと)がたったの一週間で作った急ごしらえ」のものだったからなのです。




いつも有難うございます。
トラックバック(0) |
晴雨堂ミカエル アメリカ人の国民性をよく現した言動ですね。邦画は細部を観れば緻密で繊細で技巧的ですが全体を見るとリアリティーが無い作品が多いのに対し、ハリウッド映画の細部は大雑把なのに全体で見るとそこそこリアルというのが多い。
日米開戦が始まるや日本担当の情報将校を大幅増員し、日本人を民族学的に徹底的に研究して戦略的にも日本軍を追い詰め勝利しました。勝利のためには冷徹に情報を分析し戦術戦略を立てる顔もあれば、ある程度の目的達成が見えたら大雑把・いい加減に処理する顔もあります。
日本を完全屈服させ、ある程度の安定した占領政策の目処が付いたら、その他はどーでも良いのがアメリカです。日本に限った事ではなく、現代の中東でも同じことの繰り返しです。
戦争中は熱心に日本民族のことを研究していたのに、占領してしまえば醤油や味噌などの日本の食文化もドーデモ良い、むしろ無くしてアメリカに同化したらええんや、という態度です。漢字やかなも廃止させようとしました。
633の学校教育制度にしても、何らかの計算や意図があった訳ではなく、単純にマッカーサーの故郷の教育制度が633制だった、という意味しかありません。
日本文化が残ったのは、皮肉にもGHQの下級中級職員が日本文化の良さに気が付いて働きかけた功績が強い。
保守右翼からはあまり好意的に見られてはいませんが、日本国憲法に女権を多く盛り込んだ当時二十歳そこそこのベアテ氏にしても、上層部からはよく思われていませんでした。アメリカもまた男性社会ですから、ベアテの行動は好ましく見えなかったのです。
ところで松本烝治の名前は、ジョージ・ワシントンのジョージから とったという話を聞いたことがありますが、まことでしょうか?
ぴーち こんばんは!
一院制の方がシンプルで・・・
いかにもアメリカンな考えですね(^^ゞ
広大な土地を大きなブルドーザーで
ガガガガ~~~~っと大音量をたてて
地ならしするような感覚でしょうかw
日本のように、鍬や鋤を使って
丁寧に一鍬、一鍬、手入れをするような
繊細さがみられませんね。
しかし9条の話に戻りますが、
そんな付け焼刃的なマッカーサーの草案と
日本政府の間で偶然にもポッと生まれた奇跡の法案
だったという事ですが、真相はどうだったのでしょうか。。
応援凸
晴雨堂ミカエルさんへ
黒田裕樹 確かにアメリカらしいといえばアメリカらしいですね。
良くも悪くもGHQの影響を受けているのが皮肉でもあります。
松本烝治氏の名の由来については残念ながら聞いたことがないですね。
私の母校(関西大学)の学長の経験者ではありますが。
ぴーちさんへ
黒田裕樹 確かにアメリカと我が国との違いがハッキリと現れていますね。
それだけマッカーサー草案は我が国にとって受け入れにくいものであるという裏返しになりますが。
憲法9条については、先の大戦でアメリカが我が国に苦戦したという経験から、二度と我が国が武装化しないようにという目的で発案されたという説が有力ですね。
いずれ今回の講座でも間接的に紹介することになります。
黒田裕樹さん
風早 りら 国会を一院制 二院制
この問題については
私は どちらとも 答えられません
もう少し 先生から この二つの
違いを 詳しくお話しを伺いたいです
風早りらさんへ
黒田裕樹 > 国会を一院制 二院制
> この問題については
> 私は どちらとも 答えられません
> もう少し 先生から この二つの
> 違いを 詳しくお話しを伺いたいです
二院制のメリットは、本文にもあるように「多様な民意の反映」と「専制政治の抑止」です。
一院制にも「議会の対立による立法作業の遅れ」を防ぐというメリットがありますが、議会政治と言えども万能とは言えず、政治の暴走を防ぐという二院制のメリットの方が大きいと思われます。
イギリスで
選挙ディレッタント イギリスでは二院制によって議会は混乱し、非常に足の遅い政治となっていましたから、GHQはその辺を指摘したのでは。
連邦制でもないのになんで二院制とるのか、という疑問は妥当ではないかと。
一院制と二院制のメリデメは難しい問題かも知れません。
英貴族院はあんま機能してなくて一院制みたいなもんだし。
選挙ディレッタントさんへ
黒田裕樹 貴重なご意見ありがとうございます。
なるほど、GHQにはGHQなりの見識があったということですね。
我が国の場合はすでに明治憲法で二院制が常識になっていたので、それだけGHQの言い分が理解できなかったということになるかもしれません。
ところが、民政局員の25人のメンバーのうち、弁護士の資格を持っている人物こそ存在したものの、憲法学を専攻(せんこう)した者は一人もいませんでした。このため、民政局は日本の民間憲法草案やアメリカ合衆国憲法ほか世界各国のありとあらゆる憲法を参考として、わずか一週間で急ごしらえの草案をまとめ上げ、マッカーサーの承認を得たうえで日本政府に通告したのです。
民政局のメンバーには女性も含まれており、彼女によって家族生活における個人の尊厳(そんげん)と両性の本質的平等が規定された憲法第24条が起草されたことが知られていますが、何と言っても憲法に対する素人が、しかも外国人の手によって作成された草案ですから、我が国にとっては困惑(こんわく)以外の何物でもありませんでした。
しかし、我が国には松本試案を断念して、マッカーサー草案を受けいれる以外に選択肢(せんたくし)は存在しませんでした。なぜなら、GHQが占領という立場を悪用した脅(おど)しを我が国にかけてきたからです。




いつも有難うございます。
トラックバック(0) |
ぴーち こんばんは!
本当に。。
仰るとおり、憲法に対しての素人で、しかも外国人が作成した草案となれば、多分に困惑(迷惑)してしまいますね~(^^ゞ
私のこれまでの浅はかな知識の中では
憲法はもう少し日本政府が積極的に関与して
定められた法案なのかと簡単に考えていたのですが、GHQの陰謀には太刀打ちが出来なかったのですね。GHQのこうした一連の言動の真の目的はただ日本を占領したかった・・という事のみだったのでしょうか?
応援凸
ぴーちさんへ
黒田裕樹 > 本当に。。
> 仰るとおり、憲法に対しての素人で、しかも外国人が作成した草案となれば、多分に困惑(迷惑)してしまいますね~(^^ゞ
そうなんですよ。なぜ他国が作った草案を受け入れなければならないのか、我が国でなくても困惑しますよね。
> 私のこれまでの浅はかな知識の中では
> 憲法はもう少し日本政府が積極的に関与して
> 定められた法案なのかと簡単に考えていたのですが、GHQの陰謀には太刀打ちが出来なかったのですね。GHQのこうした一連の言動の真の目的はただ日本を占領したかった・・という事のみだったのでしょうか?
占領までは成功していましたが、次の目標として「日本をアメリカの思いどおりの国にしてみせる」という傲慢(ごうまん)な考えが背景にあったと思われます。だからこその次回(29日)のような脅迫なんですよ。
ここまでくると、占領というよりは「洗脳」ですね…。
黒田裕樹さん
風早 りら GHQが占領という立場を悪用した脅(おど)しを我が国にかけてきたからです。
今まで 日本の憲法はアメリカが
草案しても 平和的に 施行されたと
思っていました
残念ですね
明日 詳しいお話 お聞きしたいです
風早りらさんへ
黒田裕樹 >> GHQが占領という立場を悪用した脅(おど)しを我が国にかけてきたからです。
> 今まで 日本の憲法はアメリカが
> 草案しても 平和的に 施行されたと
> 思っていました
> 残念ですね
> 明日 詳しいお話 お聞きしたいです
りらさんのように平和的に施行されたとお考えの方が多いのは、私たちが歴史的事実を「抹消」されているからです。
その理由と憲法施行への真実について、次回(29日)から詳しく紹介することになります。