我々日本人という民族は、島国という地域が限定された環境で育ってきたせいか、国民全体が心を一つにして行動することが良くあります。俗にいう「一億総○○」というやつですね。我が国では昔から、国民がこのように「同じ方向で物事を進める」という傾向がたびたびありました。
今回の講座の初めの方で述べた戦国時代であっても、下剋上の名のもとに「他人を殺せば出世する」という極端な論理がまかり通ったことによって、江戸時代に入ってもそれまでの殺伐とした雰囲気が色濃く残っていたのです。
しかし、徳川綱吉という稀有(けう、滅多にないという意味)な才能の政治家によって国民の感覚は激変しました。ただ、綱吉による処方が「劇薬」であったがゆえに、思いやりの精神が行き過ぎて「他人との争いは良くない」と考えるようことになったことや、他人を信用するあまりに、それが国家レベルにまで高まることで「他国が攻めてくるはずがない」という予想もしなかった方向へと思想が流れていってしまったのです。
「鎖国」という思い込みから、幕末に無理やり「開国」させられたという苦い経験も、考えようによっては綱吉による劇薬の副作用があったのかもしれません。とはいっても、その原因を綱吉にのみ求めるのは酷というものでしょう。なぜなら、我が国では一時(いっとき)は開国できる条件がそろっていたのですから。では、その種をまいたのは誰で、成長させようとしたのは誰で、さらにその芽を摘(つ)み取ってしまったのは誰なのでしょうか?
これに関しては、次回(11月28日)以降の私の講座で明らかにしていきたいと思います。
(引き続き、18時より今回の講座全体の講評について書きます)




いつも有難うございます。
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馬人 下剋上とは恐ろしい;;
殺せば出世、という変な論理ができあがってたんですね…。
戦国時代を描いた漫画などでも、
武士がピリピリした雰囲気を放っていたり、
あんなに殺し合いの場面が多い^^;
最初は「何故殺しあってるんだ?」と疑問だったのですが、
出世するための汚い手だったとは;;
馬人さんへ
黒田裕樹 下克上については講座本編でも少し触れましたが、いつどこで殺されるか分からない世の中ですからね。人間の感情から道徳心が吹き飛んで、殺伐とした雰囲気になるのも無理はないと思います。
現代とは全く異なる倫理観ですが、このような違いを知ることも歴史の勉強なんですよ。
紗那 確かに、同じ方向性に進むというのは、「高度経済成長」とかなら、プラスに作用したんでしょうけど・・・
やはり裏表あるっていうことですね。
しかし、下克上にまとまるというのもあれですけど・・・
極端><
あぁ、開国できるチャンスって何?!気になる・・・
紗那さんへ
黒田裕樹 全員が同じ考えというのは、仰るとおり極端ですからね。でも「一億総○○」というのは、我々日本人にはおなじみのフレーズですから、ある意味仕方ないのかもしれません。前回の総選挙でも似たような結果が出ていますし。
> あぁ、開国できるチャンスって何?!気になる・・・
ヒントは本文に書いていますね(笑)。まずは「種をまいた人」から考えてみましょうか(^^♪
MAHHYA 真k改革者なのに、現代のゆがめられた綱吉像、本当に忸怩とした思いになります。
これからも、一般にはあまり知られていないお話、楽しみにしています。
今回も、勉強になりました。
ありがとうございます!
MAHHYAさんへ
黒田裕樹 お言葉有難うございます(^o^)丿
正当な評価がされない人物というのは、本当に気の毒ですし、また「ウソ」を教えられる私たちにとっても迷惑な話です。
一方的な価値観で歴史を語るのでなく、複眼的なものの見方で今後も講座を続けてまいります。
それでも、徳川綱吉は、偉大
青田 黒田先生
青田です。
この内容を読んで、思ったのですが、
綱吉のしたことは、日本にとって、大事なことを
したと思います。
ただ、今の日本は、綱吉の思惑とは、違い
真逆になっている気がします。
【国内】・・唯物論の自分勝手主義社会。
綱吉の素晴らしいのは、それまでの戦国の気風で、唯物論で、自分勝手主義の社会を変えたことです。
それは、綱吉自身が唯物論者でなかったことが
大きかったと思います。
だからこそ、綱吉が考えた理想の社会としての
『道徳性』(儒学)
『命尊重の意味での厳罰化の法律』(生類憐みの令)のショック療法を打ち出しました。
逆に、今の日本では、いじめ、虐待件数の増加
さらに
平成になってから、起こる凶悪犯罪(残虐性、低年齢化)などを考える時、
戦後の物中心の唯物論の弊害が私は、原因だと思います。
私は、人命尊重だからこそ『生類憐みの令』の趣旨での法律の厳罰化は、必要だと思います。
(今でも、法律による厳罰化に反対する論者が多くいますが、)
【国外】
逆に
日本は、外国には、優しさ、思いやり、素直さ
だけで、対応しようとしています。
おそらく、綱吉も、あの世で、
『嘆いている』と思います。
青田さんへ
黒田裕樹 確かに仰るとおりですね。
綱吉の改革の精神を今こそ見直すべきかもしれません。