1698年9月6日(但し旧暦。以下同様)午前、江戸城近くの商家から出た火が、折からの強い風にあおられて北上し、江戸全体の約3分の1を焼け野原にするという大惨事となりました。しかもこの時、上野の寛永寺(かんえいじ)に建立(こんりゅう)した根本中堂(こんぽんちゅうどう、寺の中心となるお堂のこと)が落成したばかりで、第113代の東山天皇(ひがしやまてんのう)による勅額(ちょくがく、天皇の直筆で書かれた寺の額のこと)が江戸に到着したその日に火事が起きるという最悪のタイミングでした。
根本中堂や勅額は辛うじて焼失を免れましたが、当時の人々から「武士の寺に勅額を書かせた天皇陛下のお怒りが火災を起こした」というウワサが広まり、この火事は勅額火事(ちょくがくかじ)と呼ばれるようになりました。
火事による痛手から5年後の1703年11月23日には、関東を中心にマグニチュード8.1と推定される大地震が起きました。この大地震は元禄大地震(げんろくおおじしん)と呼ばれています。地震の直後には各地で大津波が発生し、地震による出火で小田原城(おだわらじょう)の天守閣が消失するなどの大惨事が起きてしまい、その後の余震も長く人々を苦しめました。
ちょうどこの年の2月に、忠臣蔵で有名な赤穂浪士が吉良上野介(きらこうずけのすけ)宅に討ち入って上野介を殺害したことで、浪士たちに切腹の沙汰(さた)があり、「浪士たちの綱吉への恨みが地震を引き起こした」と人々がウワサしました。
ウワサは所詮(しょせん)ウワサに過ぎないとはいえ、相次いで起こる天災の原因を時の為政者に押しつけるのはよくある話です。しかし、天災はこれだけで終わることなく、人々が予想もしなかった極めつけの大惨事がさらに起きてしまうのでした。




いつも有難うございます。
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h.hamauzu おはようございます。
グループの大小にかかわらず、リーダーというものは、いつの時代も嫌われ者の側面がありますね…
ところで予告されているとは言え、凄いスピードで更新されていますね。
最近は移動中に携帯で拝見させて頂いています。
動画はまたジックリとまとめて楽しませていただきますね♪
馬人 火事や地震ですか~^^;
勅額火事ってすごいタイミングですね。
勅額が到着した日に火事…。
こういう偶然で人々が悪い方向へとウワサしてしまったんですね…。
偶然すぎるってのも怖いです(´ω`;)
h.hamauzuさんへ
黒田裕樹 確かに「褒められるリーダー」というのはあまり聞いたことがないですね。前の為政者が嫌われていた場合、就任直後は期待が高まりますが、次第に嫌われ者になっていく…。現状もいずれそうなるのでしょうか!?
本物の講座を一日二回の更新にしないと、本編がストップしてしまいますからね。今回も10日間かかりますし。
いつもご覧いただき、有難うございます!(^_^)v
馬人さんへ
黒田裕樹 悪いことというのは重なるものです。それこそ坂道を転げ落ちるように…。
偶然が偶然を呼ぶ。今回は、更なる偶然による悲劇が待っているんですよね…(>_<)
運
オバrev 勅額火事に元禄大地震、そして赤穂浪士の討ち入りと、なんて言うか3重苦のような感じですね。
たとえやったことは正論でも、起きた現実は厳しいですね。
こりゃあ、為政者の宿命だと思います。運がなかったとしか言いようがない。
オバrevさんへ
黒田裕樹 本当にツキがなかったとしか言いようがないと思います。
正論というのは当時ではなかなか評価されないものなのに、そのうえにこれだけの凶事が重なっては…(>_<)
愚
JJSG こんばんは。
原因不明の天災などを、死んだ人間の怨みやタタリのせいにしたり、するなど愚の骨頂ですね。
科学が進歩した現代でもそうなのですから、昔はなおさらそう思う人々は多かったのでしょうねぇ。
一切が迷信なのに。。。
人々はいつになったら、それが迷信だと気づくのでしょうかね。
JJSGさんへ
黒田裕樹 仰るとおり、近代以前の世の中は迷信が固く信じられていましたから、「天災の原因は悪い政治にある」と思われていたんですよね。
確かに、現代でもその傾向がありますよね。まだまだ目覚めないのかもしれません。
1707年10月4日、元禄大地震を上回るマグニチュード8.6と推定される大地震が発生し、さらにその影響のためか、49日後の1707年11月23日には、富士山が大噴火を起こしてしまいました。富士山の噴火によって、周囲の地域は壊滅的な打撃を受けて飢饉(ききん)が発生し、また大量の火山灰が降り積もったことによって江戸も大きな被害を受けました。これらの大地震は宝永大地震(ほうえいおおじしん)、富士山の大噴火は宝永大噴火(ほうえいだいふんか)と呼ばれています。
立て続けに起きる火事や天災などの不幸な偶然は、それまでの元禄文化の残像を吹き飛ばし、庶民は時の為政者である綱吉のことを深く恨むようになりました。綱吉自身もショックが大きかったのでしょうか、約1年後の1709年1月に、64歳でこの世を去ってしまいました。
綱吉には後継の男子がおらず、兄の綱重の子である綱豊を養子としていました。綱吉の死後に第6代将軍となった綱豊改め徳川家宣(とくがわいえのぶ)にとってまずやらなければならなかったのは、綱吉政権末期の大混乱の状態を一刻も早く落ち着かせることでした。家宣はブレーンの新井白石(あらいはくせき)の勧めもあって、生類憐みの令の廃止を宣言し、庶民の喝采(かっさい)を呼んだとされています。
しかし、新将軍になって世の中が変わることを期待されたのは事実でしょうが、生類憐みの令の廃止については、喝采を呼ぶほどの出来事だったかどうかという疑問が感じられます。
ところで、今回の講義の最初に「生類憐みの令は、一説によれば数十万人の罪人を出した」と書いたのを皆さんは覚えていますか?
今となっては冗談としか思えないこの数字を出した人物こそが、家宣のブレーンであった新井白石なのです。




いつも有難うございます。
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えめる にゃんとぉっ! あ、すみません。驚いたもので(笑)
富士山噴火の責任は無理ニャよねぇ。
新井白石? 名前は知っているニャ。
そっか。この人が、何かを企んでいたのニャな?
頭のいい人って、ずるいことも考えるものニャね。
何しようというのか。また次回のお楽しみっ。
悲惨
JJSG ふたたび。
2度の大地震に富士山の噴火とは。。。
大打撃ですね。
当時の人たち、そりゃーもう、ものすごい悲惨だったでしょうね。。。
自然災害ですから、いかんともしがたいですねぇ。
綱吉も、自然災害の責任を押し付けられちゃー、かなわんですよね。
新井白石、名前はよく聴きます。
どんな人でしたっけ?
すっかり忘れました。
さては、人に罪を押し付ける悪い奴ですね???
えめるさんへ
黒田裕樹 富士山の噴火のような自然災害を為政者のせいにされたらたまりませんよねぇ…(>_<)
新井白石は、江戸時代きっての儒学者です。当然勉強はできます。できるんですが…。
ここから先は明日(3日)の更新をご覧下さいm(_ _)m
JJSGさんへ
黒田裕樹 当時で考えられるような悲惨な災害が綱吉政権の末期に頻発しているんですよね。前コメともかぶるんですが、綱吉公は人々の不満のはけ口にされてしまったのでしょうか。あまりにも気の毒です。
> さては、人に罪を押し付ける悪い奴ですね???
鋭いですね(^^ゞ
なみなみ こんばんは。
新井白石さん。
たぶんですけどこの人、
真面目な優等生タイプの嫌なところが煮詰まったような感じの人ですねw
粘着質というかなんというか・・・。
先生に言いつけるようなこと、ガンガンしてそうですww
それにしても荻原重秀さんは、先見の明があるというか、
ちょっと生まれるのが早すぎるぐらいの発想でビックリです。
なみなみさんへ
黒田裕樹 > たぶんですけどこの人、
> 真面目な優等生タイプの嫌なところが煮詰まったような感じの人ですねw
> 粘着質というかなんというか・・・。
> 先生に言いつけるようなこと、ガンガンしてそうですww
新井白石は政治家というよりは儒学者ですからね。学問上の理想に燃えた人から他人を見ると、どんな風に見えるでしょうか…?
> それにしても荻原重秀さんは、先見の明があるというか、
> ちょっと生まれるのが早すぎるぐらいの発想でビックリです。
そうですよね。歴史では、重秀のように「生まれる時代が早すぎる」人がたまに現れます。ただ、そういった人々の最後は…。
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こんばんは。
晴雨堂ミカエル こんばんは、映画ブログの晴雨堂です。
ブログでの講義、拝聴しています。私が思い描いていた綱吉像そのものでした。
以前、草剛氏が綱吉を演じたことがありましたが、あれが時代劇の中で最もキャラとして史実の綱吉に近いかなと思っています。あくまで比較の問題で。
田沼意次の時代が楽しみです。あの時代もかなり先進的な政治だったと私は思っています。
現代政治を占う
オバrev ふ、ふ、富士山の噴火がこの時に起こったんですか.ΣΣ(゚д゚lll)ドヒェ~
う~ん、実績を評価されずに、その時起こった災害を自分のせいにされ失脚し、変わりにできた政権は前政権を否定するところから始める。
家宣と新井白石の政権の今後は、現代の政治を占う上で重要な参考になるかも(^_-)
晴雨堂ミカエルさんへ
黒田裕樹 お言葉有難うございます。MAHHYAさんのブログではお世話になりました。
草なぎ氏の綱吉、確かにありましたね。他の部分が結構いい加減でしたが、綱吉本人としては確かに一番近いですね。史実のとおりの時代劇ができてくれればいいのですが、難しいでしょうね…。
田沼は12月の予定です。晴雨堂ミカエルさんのご期待に添えるかどうかは分かりませんが、11月の吉宗ともども、よろしくお願いします。